食器・厨房コラム

食器・厨房コラムcolumns食器・厨房コラム

器の老舗 和泉屋だからこそ知っている、プロも役立つとっておきの情報をブログ形式で配信しています。

その他 2021.8.04

日々を豊かにするうつわ 入門編

田井地

日本各地で今も愛されるその地域特有の焼き物。
その一つ一つに個性があり、知れば知るほどその魅力に惹かれていきます。
日々の生活を豊かに、幸せにしてくれるうつわを今回は3つ紹介したいと思います。

1. 益子焼

厚みと重みを感じるぽってりとした益子焼。
益子陶器市のイベントが有名なので、知っている人も多いのではないでしょうか。
「来るもの拒まず」という自由な気風が昔からあり、国内外からも数百人の陶芸家が集まり、作陶に励んでいた
とされています。場内坂を中心に立ち並ぶギャラリーを覗いてみますと、モダンなデザインのうつわが多く、その作風の多様さに驚いてしまいます。もう少し詳しく益子焼を学んでいきましょう。

城内坂・・・栃木県芳賀郡益子町にあります、益子焼のお店が数多く立ち並んでいる益子町のメイン通りで、
焼き物を見ながらお散歩するだけでも楽しい緩やかな坂道です。

1-2 関東を代表する陶芸の郷と呼ばれるのはなぜ?

江戸末期、笠間焼で修業した大塚啓三郎(おおつかけいざぶろう)が窯を開いたのがはじまりです。
民藝運動に関わった濱田庄司が移り住んだことで全国的にその名が広まりますが、窯場としての歴史は浅いのです。
濱田が絶賛した山水土瓶をはじめ、日曜雑器が生産の中心で、首都圏にも近く、流通していたこともあり、
どんどん発展していきます。今では関東を代表する陶芸の郷と呼ばれています。

山水土瓶・・・明治はじめの益子町では白泥を掛けて絵付けしたものが多く作られ、特に、
山水の絵柄を描いた土瓶(山水土瓶)の生産が盛んでした。

出典元:立命館大学アート・リサーチセンター

2. 笠間焼

洗練とモダンがダブルで花開く笠間焼。
笠間焼は茨城県笠間地域で採れた粘土を使って作られる、関東で最も古い歴史を持つ焼き物と言われています。『特徴が無いのが特徴。』と言われていますが、どういった意味なのでしょうか。
古くからあらゆる創作意欲に燃えた多彩な才能を持つ陶芸家を集結させ、競い合うように切磋琢磨し、
モダンな造形、スタイルを確立していきました。昭和の鬼才と呼ばれた人間国宝である松井康成もその一人で、
彼の作品から感じる都会的なセンスと高い芸術性が笠間焼の特徴だと言えます。
伝統に囚われることなく、創る喜びをを土に込め、より味わい深い焼き物、笠間焼が出来たのだと思います。

2-2 笠間焼の歴史と関東最古の窯

江戸時代中期 (1772〜1781年)に 笠間藩・箱田村 (現在の笠間市箱田地区) の名主であった久野半右衛門 (くの・はんうえもん) が、信楽焼の陶工の指導を受けて開窯したことが始まり。良質の原料が豊富な土地であったことに加えて藩の援助も受け、恵まれた環境の中で順調に生産されました。二百年以上も続く長い歴史の中では、生活様式の変化等から需要が減るという不遇の時代も経験しましたが、県立窯業指導所の設立、笠間陶芸団地造成、また北大路魯山人邸(きたおおじ ろさんじん)(鎌倉市)を芸術村に移築するなど笠間焼を盛り上げようとする力強い活動によって、関東最古といわれる窯は守られています。

3. 九谷焼

五彩(赤・緑・黄・紫・紺青)を中心とした優美な色彩が今日まで受け継がれており、 その和絵具の重厚感と極彩色は、多くの人々に驚きや喜びを与えます。 現代における九谷焼は、必ずしも古九谷画風に代表される伝統的なデザインにこだわらず、 それぞれの作家や窯元が鮮やかな色彩を用いて各々の技術で趣向を凝らした、 まさに和食器の「 アート 」の様ですね。九谷焼の知られざる過去について深堀していきましょう。

 

3-2 廃業からの覚醒。九谷焼の知らない過去

九谷焼の歴史は江戸時代の初期、1655年ごろ当時加賀支藩の大聖寺藩初代藩主であり、
茶人であった前田利治が九谷村で陶石が発見されたことを機に始めたのがきっかけ。
藩士の後藤才次郎を備前有田(佐賀県)へ磁器の技能習得のために派遣、九谷に窯を作りました。
しかし、この九谷窯は1730年ごろ、急遽閉鎖されます。その理由はわかっておらず、
九谷のミステリーであるとされています。
創出された磁器は、後に「古九谷」と呼ばれ、日本色絵磁器の礎となりました。
その約100年後、加賀藩の奨励により、九谷焼はふたたび覚醒します。
春日山窯、若杉窯が開窯、「再興九谷」の気運に乗じた吉田屋窯らが次々に色絵磁器を生産するなど
さまざまな感性が競い合い融合し、今日に受け継がれる百花繚乱の上絵技術が誕生しました。
近代においては、「ジャパンクタニ」の名で欧米に深く浸透しています。
「古九谷」に端を成す芸術性と「再興九谷」で備わった用の美を具有する九谷焼は
時空を超えて、今もさらなる進化を続けています。

4. まとめ

いかがでしたでしょうか。うつわの歴史や魅力を知っておくと、また新たな深みが追加され、
楽しさが増えてよりうつわに興味を持てるのではないでしょうか。
次回も全国の焼き物について紹介して行きたいと思います。

このコラムが気に入ったらシェアしよう!

日々を豊かにするうつわ 入門編

日本各地で今も愛されるその地域特有の焼き物。 その一つ一つに個性があり、知れば知るほどその魅力に惹かれていきます。 日々の生活を豊…