その他 2023.2.04
九谷焼の「歴史」と「画法」について
皆さん、「九谷焼」をご存知ですか?
深くは知らないけども、聞いたことはある。という人も多いかと思います。
石川県加賀地方で生産される陶磁器で多色の絵が描かれる上絵付けが持ち味の九谷焼。豪快で濶達な線書きの上に、緑、黄、赤、紫、紺青の五彩で施される和絵具の重厚な輝きが美しく、「ジャパンクタニ」の名で世界的にも有名になりました。
ファンも多くいる九谷焼、今回はその「歴史」と「画法」をご紹介していきたいと思います。
目次
1 九谷焼360年の歴史
1655年頃、大聖寺藩は領内で発見された陶石をもとに開窯、360年の美しい伝統を守りながら、時代に合わせた新しい発展を目指している九谷の歴史をご紹介いたします。
1-1 九谷焼の誕生
1655年元年頃、加賀藩の支藩、大聖寺藩の初代藩主が領内で発見された陶石をもとに九谷に開窯したのが始まりとされています。(九谷:現在の石川県加賀市山中温泉九谷町)
創出された磁器は、後に「古九谷」と呼ばれ、日本色絵磁器の代表として高く評価されています。濃厚な色彩が自由闊達に躍る上絵は、九谷焼の「美の源流」です。しかし、わずか半世紀で窯は突然閉鎖、原因はいまだ謎に包まれています。
1-2 九谷焼の復活と発展
古九谷廃業の100年後に加賀藩の奨励により、再興九谷の時代を迎えます。春日山窯の木米風、「再興古九谷」を目指した吉田屋窯など多くの窯が次々に独自の画風を築いてきました。
1-3 海外
明治維新後、藩からの支援が途絶えた窯は自活を迫られ、旧大聖寺藩の職人は作家として名を上げようと技術向上に努め、名工を排出。旧加賀藩の職人は輸出産業に活路を見出し、九谷庄三を中心に金彩と赤絵の「ジャパンクタニ」と呼ばれる彩色金襴手作品を欧米向けに数多く生産をしました。
1-4 現代の九谷焼
伝統的な美術工芸品として海外にもその名を知られるようになった九谷焼。昭和時代後期以降は、現代芸術の要素を取り入れて、工芸品の枠を超えた美術品として制作されるようになり、人間国宝も誕生しました。また、時代性やライフスタイルにあわせた様々なデザインが生み出されました。一口に「九谷焼」と呼んでも、時代ごとに異なる特徴があり、また現代においては作家による多様性も一層の広がりを見せています。
2 九谷の画法
九谷の歴史に触れて九谷焼に興味を持って頂けた方、更に九谷が好きになってくれた方に次にご紹介するのは画法です。
伝統の画法から明治以降に生まれた画法を紹介します、九谷の器が欲しいと思われた方の商品選びの参考になれば嬉しいです。
2-1 伝統の画法
2-1-1 古九谷(明暦元年1655~)
徳川初期の戦国世相の名残を反映し、豪快で力強い骨描きと、青(緑)・黄・赤・紫・紺青の五彩で描く色絵が特徴。黄・緑・紫で器面を塗りつぶした青手もあります。
2-1-2 木米(文化4年1807~)
木米は、仁清、乾山と並び、全国三銘陶の一人、京焼の名工である青木木米によって確立された様式です。全面に赤を施し、五彩で人物を主に描いた羅漢手が代表的です。
2-1-3 吉田屋(文政7年1824~)
緑・黄・紫・紺青の四彩で器の内側を塗り込めた重厚な作風です。古九谷風を最も受け継ぐ作風と言われ、青黄紫の三角を用い、花鳥・山水・小紋・草花などが、描かれています。実写的で柔らかな線に独自の雰囲気があります。
2-1-4 飯田屋(天保2年1831~)
題材は唐人物が主流で、細い赤色の線が描き出す緻密画に、随所に金彩を施し、優美さを醸し出しています。
2-1-5 永楽(慶応元年1865~)
京都の永楽和全の影響を受けた手法。全面に赤を下塗りし、その上に金のみで文様を描く金襴手という手法。花鳥獣虫を、一筆書するのが特徴です。
2-1-6 庄三(天保12年1841~)
西洋文化が入り、和洋折衷となった作風で「彩色金襴手」は、その雰囲気を映し、繊細かつ絢爛豪華な花鳥人物山水が特徴です。
古九谷から再興九谷までの、全ての技法を取り入れており、明治以降に、一世を風靡し、輸出産業の主流になりました。
2-2 現代(明治以降に生まれた画法)
2-2-1 青粒
大正時代に広まった、彩色の技法で、細かい青または白の点を盛り上げて並べていく鮫皮の ような手法です。粒の大きさ、色、間隔の均一さで、緻密な技術が必要です。
2-2-2 花詰
花の輪郭を煌びやかな金色で彩色し花の連続模様を器に描く画法です。九谷焼の中でも特に豪華絢爛な美しさをもち、繊細かつ力強さも感じられる画法で、国内外で高い人気を誇っています。
2-2-3 盛
置物で、最も使われている 独特な絵付け技法で代表的な伝統技法の盛技法は、別名を「デコ盛り」とも言われるように、粘土の高い絵具をクリームのように絞り出し「立体的に盛り上がった”」絵付け技法です。
2-2-4 釉裏銀彩
特定の形に切った銀箔その上に透明な釉薬を施す技法です。綺麗でとても落ち着いた表情を持っていますが、スポットライトなどで照らすと、銀箔の部分が浮かび上がり、より美しい輝きを見ることができます。銀が剥がれないためいつまでも変わらぬ美しさを保つことができます。
2-2-5 彩釉
磁器に五彩の釉薬を高火度で焼き付ける技法です。二種類以上の釉薬を、重ねて塗ることにより、段階的に色彩の変化を楽しむことができ、優美で鮮やかな絵柄が特徴です。
2-2-6 釉裏金彩
普通の金彩が、釉薬の上に金を貼り付けるのに対して、 金粉や金箔、厚さの異なる金箔を切り取って模様を作りその上に透明な釉薬を掛けて焼き付けた絵柄。釉薬を通して金が浮き出てくるため、絵の調子が柔らかく、しっとりとした質感と、品の良い輝きがあり、金が剥がれないためいつまでも変わらぬ美しさを保つことができるのも特徴です。
3 まとめ
いかがでしたでしょうか。九谷焼の歴史と画法を紹介させていただきました。
長い歴史の中で現代の形に変化した九谷焼、一口に九谷焼といっても絵の特徴や形は様々、その背景にはそれぞれの作家や窯元が鮮やかな色彩を用いて各々の技術で趣向を凝らした歴史があります。
さて次回コラムは引き続き九谷の魅力を皆様に知っていただきたい、商品を見ていただきたいという思いから「九谷の伝統と技法」について紹介しながら商品もおすすめしていきたいと思います。
また見に来ていただけると嬉しいです!
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