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食器 2019.4.15

日本の焼き物産地《近畿地方》萬古焼 伊賀焼 京焼 出石焼

遠藤

古くから焼き物作りが行われてきた、日本。
全国各地に様々な陶磁器の産地が点在しています。

今回は、近畿地方の伝統的工芸品に指定されている焼き物をご紹介します。

 

四日市萬古焼(よっかいちばんこやき)【三重県】

萬古焼の発祥は江戸時代の中期(1736~41年)。

桑名の豪商・沼波弄山(ぬなみろうざん)が趣味として京焼の技法を取り入れて始めたものとされています。
後世に受け継がれ永続することを願い「萬古不易(ばんこふえき)」の印を押したことが、名前の由来となっている。

四日市萬古焼は、陶器と磁器の中間の性質を合わせもつ半磁器であるのが最大の特徴です。

国内シェアの80%を占める萬古焼の土鍋は、割れにくく使いやすさが魅力。

その耐熱性は使われる陶土に秘密があります。
土の原料にはリチウムという鉱石が約40%ほど含まれ、
その効果で直火や空焚き、ガスレンジなどにもその耐熱性を発揮します。

急須もまた、土鍋と並び萬古焼を代表する商品の一つです。

鉄分を含んだ土で作られた、暗い紫色が特徴的な「紫泥急須」。
鉄分によりお茶がまろやかになるということで人気です。

お茶を愛する人々に古くから親しまれている萬古焼の急須は、お茶の味わいを高めるだけでなく、
使い込むほどに落ちついた独特の艶が現れます。

 

伊賀焼(いがやき)【三重県】

古伊賀と呼ばれるやきものは、桃山時代に筒井定次が伊賀領主となってから作られるようになったとされます。

焼く時の窯中の状態によって、焼き物の色や形に色々な変化が表れることを「窯変(ようへん)」と言いますが、
この窯変によるビードロというガラス質や焦げの付き具合、そして器そのものの力強い形や色が、伊賀焼の特徴となっています。

伊賀焼は大別すると古伊賀と再興伊賀に分かれます。

古伊賀とは桃山時代から江戸時代初期に作られた伊賀焼を指します。
再興伊賀は古伊賀(1584年頃~1630年代後半)が廃窯になったあと、江戸中期に再興した伊賀焼を指します。

伝世する古伊賀のほとんどは茶陶として知られます。
たとえば水指では「破袋」や「鬼の首」、花器であれば「からたち」「寿老人」「業平」などがあります。

伊賀焼は信楽焼とよく似ていると言われますが、信楽焼に比べて硬くて重みがあることや、
「伊賀に耳あり、信楽に耳なし」と言われる通り、一対の耳と呼ばれる取っ手部分が付いているところなどが異なります。
この一対の耳は、桃山時代に生まれた筒井伊賀と呼ばれる伊賀焼の特徴でもあり、この時代の伊賀焼は古伊賀と呼ばれます。

造形の歪みと焼き味の違いから、見る角度によっては全く別物に見えるのも古伊賀の面白さです。

一方、再興伊賀では従来の焼き締め陶ではなく施釉陶器が主に作られます。
造形は古伊賀と比べると端正で画一的になり、釉薬は黒釉・白釉・緑釉・辰砂のほか多岐にわたります。
行平や土瓶など、庶民の使う日常雑器として盛んに生産され、今につながっています。

 

京焼・清水焼(きょうやき・きよみずやき)【京都府】

京都において陶器窯が誕生するのは、16世紀後半の安土桃山時代。

織田信長や豊臣秀吉に仕えた茶で有名な千利休の指導のもと、長次郎が焼き始めた楽茶碗が本格的な京焼・清水焼の始まりと言われています。

「京焼」は茶の湯の流行を背景に、江戸時代初期頃から京都市内各地で生産された焼き物(清水焼、粟田口焼、御室焼、八坂焼、音羽焼、御菩薩池焼など)のこと。
対して「清水焼」は、清水寺の参道である五条坂で作られた焼き物でした。
現在は、京都で焼かれる焼き物全般を「京焼・清水焼」と呼んでいます。

京焼・清水焼は、備前焼・信楽焼・有田焼などのように決まった土や釉薬・技法があるわけではなく、全ての技法が融合されています。
その背景には、都のあった京都が日本中から選りすぐりの材料と職人が集う街であったという恵まれた環境と、
その文化を支援する神社仏閣、皇族、貴族などの大きな経済基盤を有した上層階級の存在があげられます。
高級志向と装飾性の高さ、そして多様性は、他のやきものにない京焼・清水焼の大きな特徴といえます。

京焼・清水焼は、一度焼き上げた後に絵付けを施します。
描かれる絵柄は京都らしい優雅なものが多く、職人によっても多種多様な絵柄が描かれます。

 

出石焼(いずしやき)【兵庫県】

江戸時代後期天明4年(1784年)に伊豆屋弥左衛門が出石郡細見村に土焼窯を開いたことが起源とされています。

出石焼は、国内では珍しい純白の白磁をメインとした磁器の産地です。
その白さは神秘的であり、他に類を見ないとも言われます。

もう一つの特徴が、高い技術の彫刻。
彫刻により立体的な模様が施された白磁は、見る角度ごとに様々な表情をみせます。
出石焼の緻密な彫刻技術は、芸術的にも高く評価されています。

 

おわりに

いかがでしたか?

その土地その土地によって、色味や味わい等に独特の特徴があってとても興味深いものです。

次回は《中国・四国地方》の焼き物をご紹介します。

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