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食器 2021.7.22

カトラリーの歴史

前回のコラム「カトラリーを贈る意味とは。」のまとめでも伝えさせていただきましたが、
今回は「カトラリーの歴史」に触れていきたいと思います。

1. 歴史

1-1 カトラリーの歴史

中世時代のヨーロッパでは王侯貴族でさえも、食事をする際は手づかみでした。
12世紀に入り水分の多いものはスプーンを使うようになりますが、フォークは装飾品の一部として、
ナイフは肉などを切り分ける際に使用することはありましたが、ひとりひとり使うことはありませんでした。

その根本にあるのは、
「指は神様が与えられた優れた道具である」
「食べ物は神様からの授かりものであるから、手で食べるのが正当である。フォークを使うのは摂理に反する。」

という宗教の教えがあり、「まぜる・つかむ・運ぶ」など人々は器用に指先を使って食べていました。
一般庶民は5本の指を使用して、マナーの心得がある王侯貴族は、
「親指」・「人差し指」・「中指」の三本指を使っていたといわれています。
現在のように食事の際のマナーや文化としてカトラリーが定着したのは、17世紀後半。
19世紀に入り、各家庭にも銀のカトラリーを常備するようになり、
宴席でも招く側が用意するのが当たり前となりました。
長い歴史の中で、人々は手づかみからスプーン・ナイフ・フォークを使うようになり、
カトラリーは世界に広まっていきました。大まかにカトラリー全般の歴史をお伝えいたしましたが、
それではそれぞれ「スプーン」「ナイフ」「フォーク」がどのようにして生まれたのかをご紹介します。

 

 

1-1-2 「スプーン」

ヨーロッパでの「スプーン」はもともと熱い汁物をくみ出したり、煮え立った鍋から肉を取り出すなど
日本式にいえば「おたま」に似た用途で、調理器具として使われ、最初は食事には使われていませんでした。
古代エジプトの遺跡からスプーン状のものが出土しています。これは象牙や動物の骨などで作られ、食事の為だけではなく化粧用の顔料を溶くなど化粧道具として使われていたといわれています。
スプーンはヨーロッパ全土からエジプトまでかなり広範囲で使われ、食事で必要とされなかった理由としては、
スープ類などは容器から直接口にする習慣があった為と考えられています。
15世紀頃にようやく現代と同じように使われるようになりました。
それでもまだ実用には遠く、財産として所有される傾向がありました。

1-1-3 「ナイフ」

最も早い時期に食卓に並んだカトラリーはナイフでした。
12世紀頃には大きな肉などを切り分ける道具としてテーブルに一本だけ、これは食事に招いた側が用意するものでした。15~16世紀にはいると漸く各々が使うナイフが登場するも、これは各自が持参していました。持参するという習慣はかなり長く続いたといわれています。

1-1-4 「フォーク」

フォークは食卓にあがるようになるにはかなり時間がかかりました。
11世紀頃にフォークが食事の道具として使われるようになりました。
ビザンチン帝国の姫君が未来の提督のもとに嫁入りした際にその宴席でフォークを取り出して食べたことがフォークの歴史の幕あけでしたが、なかなか市民権を得ることができなかったのです。
理由は複数個あり、冒頭でも軽く触れましたが、フォークを使うのは神の摂理に背くものだという宗教的な考えや、手づかみで食べる長年の習慣の為や、フォークは贅沢品とされていた為に使用を禁止する修道院があったりと様々な理由からフォークの普及は大きく遅れました。16世紀にはフォークがフランスの宮廷で使われるようになりますが、その後ふたたび手づかみで食べる文化に逆戻りをしてしまいます。現代のフォークとは違い、その当時は二股のごく簡素なもので、非常に食べにくく、おしゃれを気取る貴族たちが難儀して食事をする様は一般庶民から嘲笑を買うこともあったようです。17世紀に入り、ふたたびフォークを使っての食事が始まると、
フォークを使う範囲も拡大し、肉などの固形物はナイフで切った後、フォークで口まで運ぶものと決められ、
フォークは漸くナイフとスプーンとともに食事道具として扱われるようになりました。

1-2 マナーの歴史

カトラリーが一般的になるまでの歴史をご紹介させていただきました。かなりの時間がかかったわけですが、
それではマナーという考え方はどのように始まったのでしょうか。13世紀ごろに出版されたマナー本は、
マナーというよりはルールに近く、「テーブルの上や周囲に唾を吐いてはならないなど」の内容でした。
14世紀にはいると内容は基本中の基本のマナーである内容になり、「食事前には手を洗うこと」などが内容となっていきます。15世紀になり、フランス王家に嫁いだカトリーヌに付き添ってきたイタリア人シェフが著した
「 食事作法の50則 」。これが最初のテーブルマナーの専門書になりました。

2.まとめ

いかがでしたでしょうか。私たちの生活に欠かせない食事道具であるカトラリー。
人々の生活様式に変えてカトラリーが進化し今の形になったということが分かりました。
もしかすると数十年後には今とはまた違うカトラリーの形になっているかもしれませんね。

余談ですが、使い捨てのカトラリーが日本に取り入れられたのは昭和30年代で、
創業者は元自衛隊の方だったそうです。

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