食器 2019.5.11
日本の焼き物産地《九州地方:その2》 波佐見焼、小代焼、天草陶磁器、薩摩焼、壷屋焼
古くから焼き物作りが行われてきた、日本。
全国各地に様々な陶磁器の産地が点在しています。
今回は、九州地方の伝統的工芸品に指定されている焼き物をご紹介します。
波佐見焼(はさみやき)【長崎県】
波佐見焼は安土桃山時代の慶長4年(1599年)、大村藩主の大村喜前の命で登り窯を築いたのが起源とされています。
透明感のある白磁に呉須(ごす)という藍色の顔料を使って絵付けをした染付が主流であり、
料理が映えるシンプルなデザインが多く、幅広いシーンで活躍する磁器です。
「使いやすい日常の器」がコンセプトの波佐見焼は、デザイン賞を受賞したロングセラーの商品が多いのも特徴。
波佐見焼の人気ブランドの1つである白山陶器は数々のグッドデザイン賞やロングライフデザイン賞を受賞しており、
中でも「G型しょうゆさし」は、1961年にグッドデザイン賞を受賞したロングセラーアイテムです。
波佐見焼はレトロな柄や北欧風の柄などバラエティー豊かな器が多数揃っていて、手に取りやすい値段というのも嬉しいですね。
小代焼(しょうだいやき)【熊本県】
1632年(寛永9年)、丹後国の源七という陶工が細川氏を慕って共に下向し、熊本の地に窯を開いたといわれています。
小岱山(しょうだいさん)の麓に窯が築かれたためにこの名で呼ばれています。
また、別名「五徳焼(ごとくやき)」とも呼ばれ、
“腐敗しない・生臭さが移らない・湿気を呼ばない・毒を消す・延命長寿が得られる”という五つの効能があることから
芸術性だけでなく実用性を兼ね備えた器であることに由来します。
古い小代焼には高台内に鉋で「の」の様な渦巻きを入れている作品が多く「ニナ尻」と呼ばれ、
特に抹茶茶碗にはニナ尻となった製品が多くみられます。(※ニナは巻貝の意)
また、釉薬の調合割合や焼成温度の変化等により青小代、黄小代、白小代、飴小代といわれる発色技法が使い分けられ、
釉薬の深く美しい色合いと自由奔放な流し掛けの模様は素朴で力強い味わいがあります。
素朴でダイナミックな作風が魅力の小代焼。
おもてなしの器としてだけではなく、ワンランク上の普段使いの器としていかがですか。
天草陶磁器(あまくさとうじき)【熊本県】
天草陶磁器は天草地方で焼かれている陶器や磁器。
主な4つの窯元『内田皿山焼』『高浜焼』『水の平焼』『丸尾焼』の総称です。
磁器は延宝(1673年~)年間以前から焼かれ、内田皿山焼に続いて高浜焼等の窯元ができ、明和2年(1765年)に水の平焼、
弘化2年(1845年)には丸尾焼が開かれました。
天草は「天草陶石」といわれているとても品質の良い陶磁器原料の名産地。
天草陶石は他の原料との配合をせず、そのまま焼き上げるだけで美しい白磁に生まれ変わります。
製品は強く頑丈で濁りがなく美しく仕上がるのが特徴です。
江戸時代の才人、平賀源内も「天下無双の上品」と絶賛したと伝えられています。
・高浜焼(たかはまやき) :純度の高い陶石を使用しており、白く、薄く、透きとおるような品質が特徴。
透き通るような白さと深い藍青の持つ呉須(ごす)の彩りがモダンで印象的です。
・内田皿山焼(うちださらやまやき):天草陶石の白と、それを引き立てる鮮やかな絵付けがとても魅力的。
シンプルで使い勝手の良い物が多いのでオススメです。
・水の平焼(みずのだいらやき) :「海鼠釉(なまこゆう)」の元祖と言われる。独特の絵模様や艶が魅力。
釉薬を二重掛けして発色させることで、海鼠の肌のような色の深みが生まれる。
・丸尾焼(まるおやき) :丸尾が丘周辺で採取される赤土を使った素朴な味わいが特色。
薩摩焼(さつまやき)【鹿児島県】
薩摩焼は慶長3年(1598年)、豊臣秀吉の朝鮮出兵に参加した島津義弘が80余名の李朝陶工を連れ帰ったことに始まります。
こうして焼かれ始めた薩摩焼は「白もん」と呼ばれる高貴な調度品として扱われてきた「白薩摩」と、
「黒もん」と呼ばれる庶民の生活の中で愛されてきた「黒薩摩」の2種類に分けられます。
白薩摩(白もん):きめ細かな貫入が入った乳白色の肌に絵付けや透かし彫りが施された絢爛豪華な焼物で、
かつては島津家御用の品として作られていました。
黒薩摩(黒もん):鉄分の多い陶土を用い、黒釉を掛けたものが一般的。
素朴で頑丈なことが人気を呼び、庶民が普段使うものとして地元で愛されてきました。
黒薩摩の中でも焼酎の酒器として有名な「黒千代香(くろじょか)」。
そろばん玉とも言われる独特な形をしており、耐熱性に優れているので直接火にかけて癇ができます。
自宅にひとつあれば晩酌も楽しくなりそうですね。
壷屋焼(つぼややき)【沖縄県】
1682年琉球王府の命により、美里の知花窯(ちばなかま)、首里の宝口窯(たからぐちがま)、那覇の湧田窯(わくたがま)が、
壷屋に統合され、沖縄を代表する焼物「壷屋焼」として確立されました。
壷屋焼には「荒焼(あらやち)」と呼ばれる釉薬をかけない焼物と、 釉薬をかけ絵付けを行う「上焼(じょうやち)」と呼ばれる焼物があります。
荒焼(あらやち) :南蛮焼の系統を汲んでいるのが特徴であり、釉薬をかけずに1000度前後で焼きあげます。
製品は酒甕(さけがめ)や水甕(みずがめ)類などの大型の容器を中心に作られています。
ちなみに、壷屋焼の代表でもあるシーサーは、荒焼の代表でもあります。
上焼(じょうやち):大陸渡来系の絵付けされた焼き物が特徴です。
陶土に白土で化粧がけをした上で絵付けや彫刻文様を施し、釉薬をかけて約1200度の高温で焼かれたものです。
泡盛を入れるカラカラや携帯用の酒器であるダチビン(抱瓶)、碗、皿、鉢などの日常生活用品が多く、
沖縄では身近な焼き物でもあります。
おわりに
いかがでしたか?
一度でも素晴らしい陶器というものに、手で触れてみて欲しいと思います。
作り手のセンスや感性が醸しだす雰囲気、手作りならではの温かみや優しさを感じられるはずです。
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