食器・厨房コラム

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その他 2019.6.04

【焼き物】絵柄の種類 雷文・一字文・松竹梅・立涌・宝尽くし・紗綾形・麻の葉・矢絣・遠山

遠藤

焼き物に施される文様には多彩な種類があります。

文様には古い由来を持つものが多く、どうしてその場所で使われているのか?
なぜその文様が使われているのか?その意味に気が付くかもしれませんね。

 

今回は【雷文・一字文・松竹梅・立涌・宝尽くし・紗綾形・麻の葉・矢絣・遠山】をご紹介します。

 

1.絵柄の種類

 

◆雷文(らいもん)

中国古来の代表的な文様のひとつで、単独ではなく数個を連続して文様化します。

雷文は万物を潤す雷雨を意味するため「不断長久」を表す文様です。

この文様は、ラーメン鉢の内側などによく見られますね。

 

◆一字文(いちじもん)

おめでたい文字や願いに通じる文字などを文様としたもので、
「吉」「喜」「福」「寿」「夢」「卍(まんじ)」などがあります。

 

◆松竹梅(しょうちくばい)

古くから日本で好まれる文様「松」「竹」「梅」。

松は冬の寒さに耐え、竹は緑を保ち、梅は花を咲かせることから、
「歳寒三友(さいかんのさんゆう)」ともいわれ、3つが揃って吉祥の象徴とされています。

主に「長寿」を祈願するものですが、どのような祝席でも違和感なく使い回せます。

 

◆立涌(たてわく)

2本の曲線を用いて雲気、水蒸気が涌き立ちのぼっていく様子をあらわしている。

また、曲線の膨れた部分に、雲、波、藤、菊、松などを入れた、
「雲立涌」「波立涌」「藤立涌」「菊立涌」「松立涌」などの文様があります。

歴史上の屏風や宝物などにも、また能の装束などにも立涌文が用いられています。

 

◆宝尽くし(たからづくし)

宝物を集めた文様。

ルーツは「七宝」「八宝」という仏教の宝物や「暗八仙」という中国の思想・神話。

縁起が良く福を呼ぶとされている文様であり、これらを日本的にアレンジし様々な宝物を散らしています。

 

宝物とは…

・宝珠【ほうじゅ】:願いが叶う宝のたま。

・隠れ蓑・隠れ笠【かくれみの・かくれがさ】:危険な事物から姿を隠し守ってくれる。
隠れ笠は男性の文様。隠れ蓑は女性の文様。

・打出の小槌【うちでのこづち】:打てば宝が出てくる、願いを叶えてくれる。

・鍵【かぎ】:大切なものを守る土蔵の鍵。

・金嚢・宝袋【きんのう・たからぶくろ】:財宝を入れる袋・巾着袋。

・宝鍵【ほうやく】:宝の倉庫の鍵。富の象徴。

・巻物【まきもの】:知恵・知識の象徴。

・軍配【ぐんばい】:勝利の象徴。

・宝巻・巻軸【ほうかん・まきじく】:ありがたいお経の巻物。

・筒守【つつまもり】:宝巻・巻軸を入れる物。

・分銅【ふんどう】:秤で金の重さを量るのに使うおもり。富の象徴。

・丁子【ちょうじ】:スパイスのクローブのこと。貴重な薬。
夫婦円満・健康・長寿の象徴。

・七宝・花輪違い【しっぽう・はなわちがい】:仏教の経典にでてくる、7つの宝。
など、この他にもさまざまな宝物があり、器が賑やかで楽しい印象になる素敵な文様です。

 

◆紗綾形(さやがた)

卍の形を崩して連ねた模様。

中国から伝わった織物「紗綾」の地紋に使われていたことから「紗綾形(さやがた)」と名付けられました。

卍の字がどこまでも途切れず繋がっていることから「不断長久(ふだんちょうきゅう)」を表します。
「不断長久」とは『不断:絶えず』『長久:長く続くこと』ということで「家の繁栄」や「長寿」などの意味を持ちます。

また、唐紙や神社などにも見られ、黄檗山万福寺の各所に施された「崩し卍」の装飾は有名であり、
現代では、時代劇や演芸番組のふすまなどでもおなじみです。

 

◆麻の葉(あさのは)

6つの菱形が放射状に広がる幾何学的な模様。

麻の葉の模様そのものに邪気を払う力があるとされ「魔除け」の意味があります。

また、麻の木は成長が早く、強くまっすぐ育つことから、赤ん坊の成長を願って産着にも多く用いられました。

シンプルで飽きのこないことから人気のある文様のひとつです。

 

◆矢絣(やがすり)

矢羽をデザイン化した文様。

江戸時代に嫁入り道具として矢絣の着物を持たせると出戻ってこない(矢は一度放たれると出戻ってこないため)と
言われるようになり、女性の間で縁起柄として人気になりました。

江戸時代以降、矢絣の着物に袴とブーツを合わせた姿は女学生の代名詞となり大流行しました。

 

◆遠山(とおやま)

遠くに見える山々の連なりあう様子を文様にしたもの。

険しい山ではなく、丸みを帯びたなだらかな半円形の山がいくつも描かれた模様であり、
山の輪郭ははっきりと、山すそに向かうに従いぼかす表現になっています。

 

2. おわりに

 

いかがでしたか?

普段何気なく見ているところにも使用されている文様。

古来の思想や逸話など、柄の意味のルーツを辿ってみると面白いですね。

 

次回は【日月・渦紋・桜川・武蔵野・独楽筋・芙蓉手・鱗紋・吹き寄せ・菱紋・鳥獣戯画】をご紹介します。

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