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食器 2019.4.01

日本の焼き物産地《東北・関東地方》大堀相馬焼,会津本郷焼,笠間焼,益子焼

遠藤

古くから焼き物作りが行われてきた、日本。
六古窯以外にも、日本には様々な焼き物の産地があります。

今回は、東北・関東地方の伝統的工芸品に指定されている焼き物をご紹介します。

 

伝統的工芸品とは

「伝統的工芸品」とは、5要件を全て満たし、
『伝統的工芸品産業の振興に関する法律』に基づく経済産業大臣の指定を受けた工芸品のことをいいます。

「伝統的工芸品」には、法律上では次の要件が必要と規定されています。

1.主として日常生活の中で使われていること
2.主要部分が手づくりであること
3.伝統的な技術又は技法が守られていること
4.伝統的に使用されてきた天然の原材料が用いられていること
5.産地が形成されていること

*「伝統的」・・・・100年以上の歴史を有すること

*「産地形成」・・・工芸品の製造される地域内で、10企業または
30人以上の従事者がいること

 

「伝統的工芸品」と言う言葉と「伝統工芸品」という言葉はどこが違うのでしょうか。

法律では「伝統工芸品」はむかしながらの技術・技法そのままで今も作られている工芸品を指し、
「伝統的工芸品」は昔ながらの技術・技法をベースにはしているが、一部に改良がくわえられているものとしています。

 

《東北地方》

大堀相馬焼(おおぼりそうまやき)【福島県】

大堀相馬焼のはじまりは1690年。
中村藩士の半谷休閑が大堀で陶土を発見し、下男の左馬に命じて器を焼き始めたのが起源とされています。

大堀相馬焼は、青磁釉(青みがあり透明感のある釉薬)を用いた陶器が有名です。
また、藩の家紋から付けられたとされる「走り駒」紋、貫入の「青ひび」、二重構造の「二重焼」が特徴。

 

馬の絵:旧相馬藩の「御神馬」が描かれており、別名「左馬」。
「右に出るものがない」という意味から縁起が良いとして地域では親しまれてきました。
狩野派の絵師である狩野尚信の描いた馬絵が手本になっていると伝わります。

青ひび:二種類以上の熱膨張の異なる釉薬をかけることによりできる「青ひび」。
窯だしの際に陶器が外気に触れた瞬間から「ぴーん」という貫入音が鳴り響き、ひび割れが器全体に広がって地模様になります。
このひび割れ模様が、作品を親しみやすいものにしています。

二重焼:内側と外側で2つの器を重ねる「二重焼」という構造。
入れたお湯が冷めにくく、また熱いお湯を入れても持つことが出来ます。
この技法は大堀相馬焼にしかない、珍しい技法です。

 

会津本郷焼(あいづほんごうやき)【福島県】

東北最古の窯場といわれる会津本郷焼の発祥は、1593年。
会津若松城主・蒲生氏郷がお城の改修のために播磨国(兵庫県)から瓦工を招き、瓦を焼かせたのが始まりといわれています。

会津本郷焼は陶器、磁器の両方を製造し、磁器は呉須による染付や和洋絵の具による彩画等多数あります。
陶器はあめ釉や自然灰釉等、伝統的な釉薬を使用し素朴で親しみやすい深い味わいを持っています。

あめ釉を使った陶器で特に有名なものがニシンの山椒漬けに使用される「鰊鉢」であり、
文字通りあめ色の光沢を放つこの陶器は会津本郷焼の代名詞ともなっています。

 

《関東地方》

 

笠間焼(かさまやき)【茨城県】

笠間焼の始まりは江戸時代安永年間(1772~1781年)。
久野半右衛門道延という人物が近江の陶工を招き、陶器を作り始めたのが起源とされています。

伝統を受け継ぎながらも作家の個性をより重じる方向へ作風を転換した笠間焼。
現在の笠間焼の特徴として、様々な職人が自由に革新的な商品を生産していることがあげられます。

また、関東ローム層から出土する笠間粘土は粘りが強く粒子が細かいため
焼き上がりは強度が高く、丈夫で使いやすいのも特徴です。

 

益子焼(ましこやき)【栃木県】

益子焼のはじまりは江戸後期の1853年。
笠間で修行した大塚啓三郎が現在の益子町に窯を開いたのが起源とされています。

ゴツゴツとした土の持つ質感、ぽってりとした厚みが特徴の益子焼。
素朴な味わいを感じさせるところも魅力のひとつです。

また、釉薬との相性が非常によく、益子を代表する釉薬「柿釉」などに
よってつけられる色味も味わい深い印象になります。

 

基本的な釉薬には主に5種類のものが用いられます。

・柿釉(かきゆう)   :熟れた柿のような赤茶色。芦沼石の粉末を原料としている。

・糠白釉(ぬかじろゆう):もみ殻を焼いた灰から作られ、白色になる。

・青磁釉(せいじゆう) :糠白釉に銅を加えて作ります。焼くと、深みのある美しい青色になる。

・並白釉(なみじろゆう):焼くと透明になる釉薬。大谷津砂(おおやつさ)、石灰が主成分。

・本黒釉(ほんぐろゆう):鉄分を多く含み、焼くと漆黒になる。

 

おわりに

いかがでしたか?

それぞれ個性が光った味わい深い焼き物となっています。
実際にそういった名産地へと足を運んでみてはいかがでしょう。

次回は《中部地方》の焼き物をご紹介します。

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