食器 2019.8.23
『お銚子』と『徳利』の違い
『お銚子(ちょうし)』と『徳利(とっくり)』。
どちらもお酒を入れる容器なのですが、この2つにはどのような違いがあるかご存知でしょうか?
今回はそんな「お銚子と徳利の違い」についてご紹介します。
居酒屋で「お銚子1本!」と頼むと、徳利に入った日本酒が運ばれてくることが多いですよね。
現代ではどちらも同じような意味で使われがちですが、本来は全く別物なのです。
1.お銚子
金属製で柄杓のように長い柄のついた急須のような形状の酒器。
お正月の御神酒や神道の結婚式の三三九度で巫女さんが酒を盃に注ぐときに用いられるのが、本来のお銚子。
注ぎ口が1箇所の「片口」と呼ばれるタイプと、
両側2箇所に注ぎ口のある「両口」と呼ばれるタイプの2種類が存在します。
宮廷の祝宴では「片口」、大勢で酒盛りをする時など略式では「両口」のものを用い、左右の口から盃に注いでいました。
桃山時代には蓋付きの「提子」(ひさげ)が現れました。
提子はお湯や汁用などにも使われましたが、特に酒用の提子を江戸時代前期から「銚子」と呼び、
直接、盃に注ぐようになったのです。
江戸後期の天保の頃には、それまでの金属製や木製などに加え、
陶製やカラフルな色絵や染付けを施した磁製の銚子も広く用いられるようになりました。
この官女が手にしているのが、もっとも古い形状の「銚子」です。
長い柄と注ぎ口のついた器で、直火で酒を温め、盃に注ぎ入れていました。
一方で、こちらの官女が手にしている急須のような形状の「提子」は、
樽から酒を補充するための「銚子」の補助的な役割をしていました。
2.徳利
一般的には口が狭く胴のふくらんだ形状の酒器。
この独特な形は、水筒代わりに使用していた「ひょうたん」がモデルとなっています。
徳利は今で言うと一升瓶や酒樽のような役割で、
お酒だけでなく醤油や酢など液体や穀物の運搬、貯蔵に用いられていました。
そのため、サイズも一升から三升入りの「大徳利」が主流で、
酒は一度銚子に移し替えてから、酒席へと運んでいました。
現代のように盃やお猪口にお酒を注ぐため、
一~二合程度の小さな徳利を用いるようになったのは、
庶民がお酒を燗して飲むようになった江戸時代中期頃です。
それが明治時代以降には、小型の「燗徳利」のことを、
酒を注ぐという同じ機能から「銚子」とも呼ばれるようになったのです。
徳利の呼び方の由来は「とくり」から「とっくり」に変化したと言われていますが、
なぜ「とくり」と呼ばれていたのかは諸説あり、正しいことはわかりません。
お酒を注ぐ時の「とくりとくり」という音から“とくり”と呼んだという説であったり、
見た目以上にお酒が入る事から「徳となり利益があること」から付けられたという説、
「トックウル」という朝鮮語(酒壺の意)から来ているのではないかという説など由来は様々です。
室町後期には、「とくり」という酒の器が既に使われており、
「徳裏」「陶」「土工季」などの文字が当てられていましたが、
やがて日本人好みの「徳利」が一般化したようです。
また、「酒」の部首「酉 (さけのとり/ひよみのとり)」は徳利の形から来た象形文字なのです。
3.おわりに
いかがでしたか?
酒器の歴史も意外と奥深くて面白いですね。
徳利にも色々な素材や形があります。
飲む器ひとつで味も変わるといわれていますので、
こだわりの器を探してみるのも楽しいかもしれませんね。
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