トレンド情報 2018.9.21
飲食店のHACCP義務化へ
2018年6月に食品衛生法が改正され、
製造メーカーから個人の飲食店に至るまで、
食品・飲食に関係する事業者に対してHACCP導入が義務化されます。
背景には、食の環境変化、食中毒、食の安全のグローバル化があります。
また、2020年に東京オリンピックを控えており、
食品の安全性を国際基準にまで上げるという狙いもあるようです。
HACCPを導入することで、食中毒発生による営業停止や
お客様の被害を未然に防ぐことができます。
ここでは、小売・飲食店の小規模事業者に対する
「HACCPの考え方に基づく衛生管理」についてご紹介します。
目次
1.HACCPの考え方に基づく衛生管理とは?
食中毒予防の三原則(「つけない」「増やさない」「やっつける」)を基本に、
衛生管理計画を策定し、実施し、記録する作業になります。
衛生管理計画とは、どの食品・衛生面についても行う「一般的衛生管理」と、
食品の調理方法にあわせて行う「重要管理ポイント」の2つから構成されます。
2.一般的衛生管理のポイント
食品、厨房器具、調理器具、店舗の衛生面や従業員の健康管理になります。
2-1.原材料の受入確認
納品された商品の外観、におい、包装の状態、表示(期限、保存方法)、品温などを確認します。
問題があれば、返品や交換などします。
2-2.冷蔵・冷蔵庫の温度確認
温度計で庫内温度を確認します(冷蔵:10℃以下、冷凍:-15℃以下)
また、定期的に食材の期限表示も確認します。
問題があれば、設定温度の調整、故障の場合はメーカー修理を依頼します。
また、食材に応じて破棄します。
2-3.交差汚染・二次汚染の防止
生肉、生魚介類などの食材はふた付きの容器などに入れ、
冷蔵庫の最下段に区別して保管します。
調理器具などを介して食材に生肉などからの汚染の可能性があるような場合は、
必ず加熱して提供します。
または、食材に応じて破棄します。
2-4.器具等の洗浄・消毒・殺菌
まな板、包丁、ボウルなどの調理器具は、肉や魚などの用途別に使い分け、
都度十分に洗浄し、消毒します。
使用時に汚れや洗剤などが残っていた場合は、洗剤で再度洗浄、
または、すすぎを行い、消毒します。
2-5.トイレの洗浄・消毒
トイレの洗浄と消毒をします。
調理を行う時の服とは異なる服、くつ、ゴム手袋を身に着けます。
掃除の際は特に便座、水洗レバー、手すり、ドアノブなどは念入りに消毒します。
業務中にトイレが汚れていた場合は、洗剤で再度洗浄し、消毒します。
2-6.従業員の健康管理・衛生的作業着の着用
従業員の体調、手の傷の有無、着衣などの確認します。
下痢などの消化器系の症状がある場合は調理作業に従事させない。
手に傷がある場合には、耐水性絆創膏をつけた上から手袋を着用させます。
汚れた作業着は速やかに交換させます。
2-7.衛生的な手洗いの実施
従業員の衛生管理を行います。
トイレの後、調理施設に入る前、盛り付けの前、作業内容変更時、
生肉や生魚などを扱った後、金銭をさわった後、清掃を行った後に手洗いをします。
3.重要管理のポイント
食中毒を防ぐため食材、調理の状況に応じて、
3つのグループにメニューを分類しチェックします。
▼第1グループ:非加熱のもの(冷蔵品を冷たいまま提供)
メニュー例
サラダ、刺し身、冷奴など
チェック例
・野菜を洗浄し盛り付けているか
・直ぐに提供できない場合は冷蔵庫に保管しているか
▼第2グループ:加熱するもの(冷蔵品を加熱し、熱いまま提供、加熱後、高温保管)
メニュー例
ステーキ、てんぷら、唐揚げなど
チェック例
食品の中心部が十分に加熱されたときの火の強さや時間、見た目(形状・
色)、中心部の色などを確認しておき、
日々の調理の中では、見た目などによって加熱が十分であることを確認します。
新しいメニューを追加した場合にも同様の確認します。
▼第3グループ:加熱後冷却し再加熱するもの、もたは加熱後冷却するもの
メニュー例
カレー、スープ、ポテトサラダ
チェック例
冷却の段階で危険温度帯(10~60℃)に長く留まらないようにすることが重要です。
熱後速やかに冷却、再加熱時には気泡、見た目、温度等を確認します。
冷蔵庫より取り出したらすぐに提供する、冷蔵庫の温度等を確認します。
4.計画に基づく実施、確認、記録
上記の一般的衛生管理の計画に基づいて実施します。
可能であればチェックした方と別の方が、
確認を行い必要であれば特記事項を記載したほうがよいでしょう。
これらの実施、確認、記録を行うことで
以下のような衛生管理情報が明確になります。
1.衛生管理のポイントを明確にし、実施することで、食中毒発生の未然防止になります。
2.万が一、問題が発生した場合、衛生管理を適切に行っていたことの証拠書類となります。
3.記録を実施することで、業務の改善点が見えてきます。
これにより業務の見直しを図り、効率化につながるなどの効果が生まれます。
5.まとめ
今回の改正により、食の衛生基準が高まり、
より安全で安心な食品が提供されることになると考えられます。
飲食店にとっても食中毒などの発生を軽減できることは、
大きなメリットといって良いでしょう。
これまで以上飲食店は対応に迫られますが、安全な基準ができることで
お客様が安心して料理を食べられる環境作りになります。
また、従業員の衛生管理意識を高める効果もありそうです。
【参照】
公益社団法人日本食品衛生協会
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